研究概要 |
C57BL/6J雄性マウスを使用し、control(O_2 21%)、高濃度酸素(O_2 80%,)、水素(O_2 80%,H_2 2%)、NO(O_2 80%,NO 80ppm)、NO+水素(O_280%,NO 80ppm,H_2 2%)の5吸入群(いずれもN_2 Balance)にて実験を行い、生存時間解析を行った。肺障害の程度を肺乾湿重量比とMPO(myeloperoxidase)活性で6日目に調べた。水素群、NO群およびNO+水素群では、高濃度酸素群に比べ生存率が延長した。高濃度酸素吸入ではcontrol群に比べ肺乾湿重量比が有意に高値を示し、水素群、NO群、NO+水素群では高濃度酸素群と比べ、乾湿重量比の増加が有意に抑制された。control群と高濃度酸素群を比較すると、MPO活性値が有意に上昇し(P<0.01)、高濃度酸素群と水素群を比較するとMPO活性値が有意に低下した(P<0.01)。つまり、水素の吸入が好中球集積を抑制していた。 ヒト肺胞上皮細胞(A549)に酸化ストレスを与え、水素付加有無による細胞数および細胞内活性酸素種(ROS)量を比較検討した。水素による細胞の生存率はメナジオンで減少し、アンチマイシンAで増加し、フェントン反応で変化なかった。メナジオンでは水素付加によりROSの生成が増加し、mPTPを開口させOHラジカルを生成させる酸化ストレスに対しては、細胞保護効果が見られなかったが、アンチマイシンAのようなmPTPを開口させない酸化ストレスに対してはROS生成を抑制し、細胞保護効果があった。 マウス肝からミトコンドリアを単離し、蛍光試薬MitoSOXを用いてスーパーオキシド濃度を測定した。ミトコンドリアから出ているベースラインのスーパーオキシドは、水素付加群ではコントロール群に比べて有意に低く、また、アンチマイシンAを添加した後の産生量の増加も小さくなっていた。
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