研究概要 |
1)特発性間質性肺炎における細胞老化とリモデリング 肺生検組織において細胞老化の指標であるSA-β-gal,p21がIPF肺胞上皮、細気管支上皮細胞に陽性であったが、これに対し線維芽細胞には老化の指標は認められず、同じ環境内での細胞ごとの反応性が線維化におけるリモデリングをきたしていると考えられた。線維芽細胞と上皮細胞は、アポトーシスに対する感受性も異なる。今後は、細胞老化と細胞増殖の違いについてさらに研究を進めている。 2)老化細胞とsenescence associated secretary phenotype(SASP) さらにヒトprimary culture気道上皮を用いて、喫煙暴露によって酸化ストレスによる老化、炎症性サイトカインであるIL-1産生を認めた。SIRT6は、IL-1の線維芽細胞増殖作用を抑制した。したがって、気道上皮の老化を抑制することによって、サイトカインの産生即ち老化細胞のSASPを抑制することが線維化抑制につながると考えられる。インフラマソームはIL-1の産生において主たる経路である。インフラマソームはSASPと関連することが予想される。SASPやインフラマソームのシグナル伝達経路と、感染による線維化の増悪、toll like receptorとの関連性について今後研究を進めたい。 2)TGF-βによる気道上皮細胞の老化とp21,SIRT6 ヒトprimary culture気道上皮細胞は、TGFを投与するとp21の発現が亢進し、SA-βgalが陽性となった。SIRT6を強発現させると、老化は抑制された。TGFは線維芽細胞の増殖や細胞外基質産生を促進するだけでなく、上皮細胞の老化を介して炎症性サイトカイン産生、線維化促進に働くと考えられた。TGFを治療標的にすることによって肺の抗老化作用も含めて効果が期待される。
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