肺癌における合理的治療選択システム構築のため、新しく臨床開発されつつある分子標的治療薬に対し、種々の網羅的解析方法を利用しながら、機能的な観点からの選択法を導入し、再現性のある確かな感受性関連因子を選択している。この情報を用い、感受性予測モデルを構築することを試みている。肺癌細胞株30株パネルの感受性データベースを作成し、関連および感受性関連遺伝子のマクロアレイを用いたトランスクリトーム、抗体アレイや2D-DIGEのプロテオーム解析、キナーゼ解析などの結果と抗癌剤感受性との関係を解析し、この結果に、薬剤の分子標的のシグナル情報解析を取り入れている。現在進めている分子標的治療薬は、HDAC阻害薬、PKC阻害薬、EGFR阻害薬である。HDAC阻害薬については、すでに、トランスクリトームから多数の感受性予測因子候補を選択、これらの因子についてシグナル情報解析を行うことで、より確実性の高い感受性予測モデルを構築した。同時に、この薬剤暴露により変化する分子を用い、併用療法開発を行い報告している。具体的には、変化する因子に感受性の関わる薬剤を併用することにより効果が増強することを示した。PKC阻害薬については、遺伝子発現解析から、8遺伝子発現を用いた薬剤感受性予測モデルを構築し、100%の精度での感受性予測を可能にした。EGFR阻害薬については、EGFR遺伝子変異の状況とその個別化治療の限界を見極めた後、μRNAなどの情報から感受性にとどまらず他の治療との併用療法の開発を行なっている。
|