研究概要 |
肺癌の薬剤効果に関わるマイクロRNA(miRNA)を明らかにし、新たな治療法を開発することを目的に研究を計画遂行した。平成21-22年度までに、肺癌細胞株30株に対する8種類の抗癌剤と2種類の分子標的剤(Gefitinib,Enzastaurin)の薬剤感受性試験と網羅的遺伝子およびmiRNA発現解析を行い、各薬剤の感受性因子をスクリーニングした。この中から8種類の抗癌剤感受性に共通に関わる4個のmiRNA(miR-21,miR-31,miR-193b,miR-365)を明らかにした。 今年度は、肺癌の分子標的剤感受性に関わるmiRNAについて研究を進めた。 1.PKCβ阻害剤(Enzastaurin)に関しては、遺伝子発現解析によりJAK1が効果予測因子であることをこれまでに明らかにした。今年度は、miR-21がJAK1によって直接に発現制御を受け、薬剤効果に重要な役割を果たしていることを明らかにし、論文報告を行った(Shimokawa et al. Br. J. Cancer,2012)。今回の結果をもとに、JAK1またはmiR-21の発現を用いたEnzastaurinの個別化治療への臨床応用を考えている。 2.EGFR変異陽性肺癌のキードラッグであるEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(Gefitinib)の耐性に関わるmiRNAについて研究を行った。Gefitinib耐性機序の1つであるEMT(上皮間葉移行)に関し、miR-23aがE-cadherinを標的因子としてEMTに関与していることを明らかにした。さらに肺癌細胞株にmiR-23a強制発現させることでGefitinib耐性を導くことを見出し、miR-23aがGefitinib耐性克服に向けての新たな治療標的に成り得る可能性を見出した(論文投稿中)。
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