Transcriptome scanにより選び出した血清カテプシンS(CTSS)濃度の、サルコイドーシスの診断における意義について、今年度はその活性を測定した。用いた測定キットはInnoZyme Cathepsin S Activity Assay Kit(Calibiochem)で、対象は健常者20名、(年齢範囲20-56歳)、サルコイドーシス患者64名(25-74歳)。その結果、酵素活性はこれまで測定した蛋白濃度と概ね有意な相関を示した(r=0.654、p=0.002)。その他の疾患を測定しても結果は同じと考えられたので、未測定である。 一方Transcriptome scanでカテプシンD(CTSD)も高い発現が見られており、その血清濃度も測定した。使用したキットはSensoLyte 520 Cathepsin D Assay Kit(Anaspec)である。しかし血清CTSD濃度は、健常者と比較してサルコイドーシス患者では有意な上昇を認めなかった。したがって肺胞マクロファージでのmRNAの発現が、血清蛋白として反映されない場合もあることが分かった。 以上よりTranscriptome scanで得られた情報を元にした、血清マーカー検索結果として、現在のところCTSS濃度が、疾患特異性は高くはないが疾患によってはACEより高い鑑別能を有する有用なマーカーと言える。しかしTranscriptome scanで発現がもっとも亢進していたLRAP(Leucocyte-derived arginine aminopeptidase)については、そのELISA系が未整備であり、そのマーカーとしての可能性についても今後検討の余地があると考えている。
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