研究概要 |
本研究はDDS(Drug Delivering System)技術を応用し,抗酸化剤や降圧剤などの薬理効果が期待されるTEMPOLなどのニトロキシルラジカルをベースとした新たな腎保護薬・慢性腎臓病治療薬開発することを目的とする. 本研究は以下の各ステップからなる. 1.薬理効果の高いニトロキシルラジカル・誘導体の選定 2.この化合物のナノ粒子合成 3.動物実験による生体内安定性・安全性の確認 4.疾患モデルにおけるレドックスセンサー機能効果検討 5.疾患モデルにおける抗酸化薬理効果検討 昨年度までの研究においてTEMPOをニトロキシルラジカル体として選定しナノ粒子(RNP)を合成,生体内安定性・安全性の確認した.本年度は疾患モデルとして虚血再還流障害急性腎障害モデルを用い.ナノ粒子はTEMPO含有pH応答性,pH非応答性RNPを用いその抗酸化および腎保護効果を検討した. pH応答型RNPは非粒子化TEMPO,TEMPO非含有ナノ粒子,pH非応答RNPに比べ,急性腎障害後の血清クレアチニン・尿素窒素上昇の抑制が認められ,組織病理学的にも尿細管障害の抑制効果が認められ,pH応答型RNPのすぐれた腎保護効果が示された.一方,血液中での安定性は非粒子化TEMPOの半減期約10秒に対しpH応答型RNP約25分,非応答型約5.7時間と高い安定性を示した.これらの事実は,単なる抗酸化物質のナノ粒子化だけでなく,pH応答性を導入することによる疾患特異的部位へのアクティブターゲッティングによる薬物集積性が急性腎障害治療に有用であることを示した. 今後は生体局所でのナノ粒子動態,形状変化,抗酸化効果発現などについて詳細な検討を行う予定である.
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