研究概要 |
本研究はDDS(Drug Delivering System)技術を応用し,抗酸化剤や降圧剤などの薬理効果が期待されるTEMPOLなどのニトロキシルラジカルをベースとした新たな腎保護薬・慢性腎臓病治療薬開発を目的とする. 本研究は以下の各ステップからなる. 1.薬理効果の高いニトロキシルラジカル・誘導体の選定 2.この化合物のナノ粒子合成 3.動物実験による生体内安定性・安全性の確認 4.疾患モデルにおけるレドックスセンサー機能効果検討 5.疾患モデルにおける抗酸化薬理効果検討 昨年度までの研究においてTEMPOをニトロキシルラジカル体として選定しナノ粒子(RNP)を合成,生体内安定性・安全性の確認,虚血再還流障害急性腎障害モデルにおけるRNPの腎保護効果を示してきた.本年度は意図した設計通りにRNPが作動するかどうかなど,RNPの体内動態解析を中心に検討した. 既報の通り,pH応答型RNPは非粒子化TEMPO,TEMPO非含有ナノ粒子,pH非応答RNPに比べ,急性腎障害後の血清クレアチニン・尿素窒素上昇の抑制,組織病理学的に尿細管障害の抑制効果が認められる.RNPはその構造上の特性から,粒子化された状態か否かをESR信号から知ることができる.この特性を利用し,虚血再潅流障害におけるRNP生体内動態をex vivoにてESR解析した.結果として,pH応答型RNPは血中では粒子化形態を保つものの,虚血再潅流腎で選択的に粒子形態が崩壊し,内部の抗酸化物質が露出し抗酸化作用を発揮していることが確認された.これによりpH応答性を導入することによる疾患特異的部位へのアクティブターゲッティングによる薬物集積性が急性腎障害治療などの酸化ストレス病態の治療に有用であることを示した.さらに上記5に関連し腎障害における腹膜透析療法への応用に付き基礎的探索を行った.
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