糸球体上皮細胞の障害が蛋白尿の出現、不可逆的な腎機能廃絶につながることが明らかにされている。更なるメカニズム解明のためには培養細胞での解析が必須であるが、現状の糸球体上皮細胞由来培養細胞は、生体での形質の大部分を失っている。昨年度、連携研究者である田中より供給された新規バイオマテリアルであるハニカム膜上で糸球体上皮細胞を培養し、細胞機能が向上することを確認した。今年度はこの培養系を用いて陰性荷電減弱の責任となる糖転移酵素(糖鎖付加酵素)を同定するとともにアンジオテンシンII負荷により発現変動を検討した。平成22年11月に、realtime PCR装置の温度制御部分が不調となり、研究の遅延が生じたため平成23年度に一部研究を繰越した。 a)ハニカム膜上で培養した際の培養糸球体上皮細胞におけるシアル酸合成酵素GNEと糖転移酵素ClGalTlの発現変動をreal-time PCR法にて検討した。両酵素の発現は増強する傾向を示した。 b)アンギオテンシンII添加により培養糸球体上皮細胞におけるGNEとClGalTlの発現変動をreal-time PCR法にて検討した。アンジオテンシンII負荷により両酵素の発現は量依存的に減少する傾向を示した。 GNEとClGalTlの両糖転移酵素は糸球体上皮細胞において、負荷が生じるとその発現が減少することから陰性荷電減少に関与していることが示唆された。
|