研究概要 |
1)ヒト近位尿細管上皮培養細胞でのPPAR-γ発現の検討とPPAR活性の確認 ヒトの近位尿細管上皮培養細胞において、ペルオキシゾーム増殖薬活性化受容体(PPAR)-α,β,γのmRNA発現をreal time PCR法で確認し、PPAR-γ蛋白発現をImmunoblot法で確認した。PPAR-γ活性化薬のピオグリタゾン(3μM)とPGJ2(5μM)、アンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)であるテルミサルタン(10μM)はpPPRE-TK-lucの活性を増強し、前2者の同活性は特異的PPAR-γ阻害薬GW9662で抑制された。また、ピオグリタゾンとテルミサルタンは、PPAR-γの下流遺伝子である心型(H-)・肝型(L-)脂肪酸結合蛋白(FABP)、liver X受容体-α(LXR-α)のmRNA発現を増強した。 2)低酸素刺激,TNF-α,TGF-βでの培養近位尿細管上皮細胞のFABP、PPAR、FXR発現動態とPPAR・FXR活性化の抗炎症・抗線維化作用の検討 48時間の低酸素刺激で、PPAR-γmRNA発現が高度(50%以上)に減少し、PPAR-α,βとRXRsは軽度(20-30%)に減少し、RARsとFXRの発現量は不変であった(cDNAアレイ解析)。TNF-α(10ng/ml)あるいはTGF-β(5ng/ml)は、PPAR-γ、H-・L-FABP,LXR-αのmRNA発現を抑制した。L-FABP発現ベクターでHPTECsに十分なL-FABPの発現を誘導したところ、PGJ2によるPPRE活性亢進が約20%程度増強した。 ピオグリタゾンとテルミサルタンは、基底状態のMCP-1発現とPAI-1発現を抑制したが、PPAR-γ作用を有さないARBであるエプロサルタン(10μM)は、PAI-1発現を抑制しなかった。テルミサルタンは、デキサメサゾンとTGF-β誘導性のPAI-1発現も20%程度抑制した。さらに、ファルネソイドX受容体(FXR)活性化薬であるGW4064は、基底状態、TNF-α誘導性のMCP-1とVEGF-C発現を抑制しなかったが、基底状態のPAI-1発現を抑制した。 その活性化薬には、インスリン抵抗性の改善作用だけでなく、抗炎症・抗線維化作用が想定され、FXR活性化薬においても抗線維化作用の可能性が認められた。
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