研究概要 |
1)ヒトメサンギウム培養細胞(HMC)でのPPAR-α,δγ発現の検討とPPAR活性の確認 HMCにおいて、ペルオキシゾーム増殖薬活性化受容体(PPAR)-α,β,γのmRNA発現をreal time PCR法で確認し、PPAR-γ,δ蛋白発現をImmunoblot法で確認した。PPAR-δ活性化薬のGW516(10μM)、PPAR-γ活性化薬のピオグリタゾン(Pio : 3μM)、アンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)であるテルミサルタン(Telm : 10μM)はpPPRE-TK-lucの活性を増強し、Pioの活性はPPAR-γ阻害薬GW9662で、Telmの活性はPPAR-δ阻害薬GSK0660で特異的に阻害された。また、GW516,Telmは、PPARの下流遺伝子である心型(H-)脂肪酸結合蛋白(FABP)、liver X受容体-α(LXR-α)のmRNA発現を増強し、LXR発現増強はPPAR-δ特異的阻害薬(GSK-0660)で抑制された。Telmは、HMCにおいてTGF-β(25pg/ml)誘導性のPAI-1,TGF-β発現を抑制し、その抑制作用はPPAR-δが介在する可能性があった。 2)ヒト肝型FABP過剰発現の培養マウス近位尿細管上皮細胞株(L-FABP-mProx)とマウス(L-FABPTg)腎における低酸素刺激,TNT-αでのFABP、PPAR発現動態とPPAR活性化の抗炎症・抗線維化作用の検討 マウス近位尿細管上皮細胞(mProx)にヒトL-FABPのゲノム遺伝子を導入したL-FABP-mProxは、mProxに比してヒトL-FABP発現が約400倍以上であり、PPAR-αmRNA発現が10倍に、PPAR-γmRNA発現は1/10に減じた。PPAR-αの誘導因子とされるHepatocyte nuclear factor (HNF)-4αは、L-FABP-mProxで発現が増強し、低酸素刺激ではHNF-4αとPPAR-αは、両者とも20-40%程度減少したため、HNF-4αのPPAR-α発現への関連性が予想された。PPAR-αの下流遺伝子であるマウスL-FABPmRNAもL-FABP mProxでは約30倍に増加した。また、L-FABP-mProxでは、mProxに比して、基底状態のPAI-1, MCP-1, TGF-β, CTGF発現の低下があり、TNF-α誘導性のMCP-1発現が有意に低下した。L-LABPTgマウス腎でも、対照マウス(B6)に比して、HNF-4α,PPAR-α,マウスL-FABP mRNA発現の軽度の増加が認められ、腎組織においてもFABPとPPARが相互に作用することが窺えた。 以上より、FABPはHNF-4αを介してPPARと相互作用し、PPARが抗炎症・抗線維化作用を有する可能性が示され、また、PPAR活性を介し抗線維化作用を呈する実用ARBの存在が認められた。
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