研究課題/領域番号 |
21591026
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
丸山 彰一 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (10362253)
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研究分担者 |
尾崎 武徳 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (10452195)
湯澤 由紀夫 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (00191479)
松尾 清一 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (70190410)
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キーワード | 脂肪由来細胞 / 間葉系幹細胞 / 低血清培養法 / 免疫抑制 / 臓器再生 / 糸球体腎炎 / 急性腎障害 / HGF |
研究概要 |
我々は、低血清培養法を用いることで、脂肪から高い増殖能を有する間葉系幹細胞(MSC : mesenchymal stem cell)を選択的に培養することに成功した。この細胞は各種のモデル動物において良好な臓器再生促進効果を示すとともに、強力な免疫抑制作用を有する。我々の研究の最終的なゴールは脂肪由来幹細胞の再生促進作用と免疫抑制作用を利用し、腎臓病に対する新たな細胞治療を開発することである。本研究はそのための基礎的検討を行うことを目的としている。まず、ラットの葉酸腎症(急性腎障害モデル)を用いて治療実験を行った。その結果、低血清培養脂肪由来MSC(LASC)は高血清培養脂肪由来MSC(HASC)や骨髄由来MSC(BMSC)よりも強力に腎機能障害を抑制した。腎病理の検討でも、尿細管障害の抑制およびマクロファージ浸潤の軽減効果が観察された。さらに2週間後の腎線維化をLASCはHASCよりも強力に抑制した。投与ルートに関しても検討したところ、静脈内では有意な効果が得られず、腎被膜下投与でのみ有効であった。 続いて、腎保護効果の分子機序を明らかにするための実験を行った。我々はこれまでにin vitroの系でLASCではHASCと比較してHGFとVEGFの分泌量が格段に高いことを見出している。今回は治療実験の腎組織を用いてHGFとVEGFの発現量をEUSAで検討した。LASC投与群ではHASC投与群と比較してHGFとVEGFが有意に高い値を示した。次に、VEGFとHGFに対するsiRNAを用いてノックダウン実験を行った。HGFをノックダウンしたLAscを投与すると治療効果が有意に抑制された。一方、VEGFをノックダウンしたLASCでは抑制は軽度であった。このことから、このモデルではLASCの腎保護作用の少なくとも一部はHGFを介していることが明らかとなった。 免疫抑制能に関しては、LASCがHASCと比較してより強力にT細胞増殖を抑制するという結果を得ている。今後、LASCの再生促進作用と免疫抑制作用を有効に利用し、各種腎炎モデルでの検討を進めていく予定である。
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