腎臓の機能単位、ネフロンには20種類以上の細胞が存在するが、その全細胞が1種類の幹細胞(後腎間葉系細胞)から発生する。この幹細胞はヒトでは生下時までに失われ、それと同時にネフロン形成が終了するため、生後に強く障害されたネフロンは修復できず、腎機能が低下する。この幹細胞プールを生後も保持することが可能になれば、ネフロン形成を継続できる可能性がある。 骨形成因子のひとつであるBMP7が欠損すると腎臓が低形成になることが知られているが、腎発生が極めて早い段階で停止するため、その腎発生における役割は不明であった。申請者はBMP7コンディショナルノックアウトマウス(BMP7 CKO)と全身性誘導性Creマウスを用いて任意の時点でBMP7発現をノックアウトすることを可能にし、BMP7ノックアウト腎では幹細胞が未分化性を失い、過度に分化することを見出した(manuscript in submission)。さらに申請者らはGeneChipを用いてBMP7の下流エフェクター候補分子として転写因子six2を同定した。Six2欠損マウスの腎臓のフェノタイプはBMP7ノックアウトマウスと似通っていること、BMP7ノックアウトマウスのフェノタイプがsix2の強制発現によって回復することから、BMP7がsix2発現を誘導することによって、腎幹細胞の未分化性を維持していることを見いだした。 同マウスでは神経幹細胞の数も低下しており、BMP7が腎臓のみならず、脳を含む複数臓器の幹細胞維持に関与している可能性がある。
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