研究概要 |
ARPKDは、PKDと進行性の肝線維化を特徴とする疾患である。近年、PKDに関連する蛋白の細胞内局在はprimary ciliumに多く認められることから、PKDの病態は、flow sensing異常であるという考え方が支配的となっている。しかしながら、flow sensing異常がどのように、細胞骨格異常や肝線維化につながるのかは未解明のままであった。我々は、細胞骨格のregulatorとして低分子GTPaseに着目、PD1強発現MDCK細胞でRhoA、Rap1B蛋白がcontrolに比べ発現低下、反対にPkhd1 ko細胞で発現増強していることを見出した。そこで、RhoA,Rap1Bの蛋白量を制御しているユビキチンE3 ligase、Smurf1,2を調べたところ、PD1とSmurf1,2がvesicle様の複合体を形成していることを共免疫沈降により確認した。Pkhd1 ko細胞では、Smurf1,2の細胞内局在変化、細胞骨格異常が認められた。また、Pkhd1 ko細胞では、clathrinによるendocytosisが増強すると共に、lipid raftによるendocytosisが減弱していた。上記の分子の異常はラット疾患モデルPck ratの胆管細胞でも認められ、smurf1,2とlipid raftによるendocytosisがTGF-β受容体を不活化することから、この疾患モデルにおけるTGF-b signal増強が示唆され、実際にp-smad2のwestern blot法により確認した。次に、我々は、集合管でNa再吸収を行うEnacがsmurfと同じNedd4 familyであるNedd4-2で制御されていることに着目、PD1とcomplexを作ることを確認した。実際、PD1の異常をもつpck Ratにおいて、各Enacの発現が集合管apical膜で亢進していることが確認された。ARPKDの腎嚢胞における細胞骨格異常、肝線維化、高血圧という病態が、vesicle traffickingという概念で統一的に説明出来る可能性を見出した。
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