研究概要 |
SDラットを用いて、STZを経静脈的に投与することにより糖尿病を発症させた。血糖値の推移から糖尿病の発症を確認した後にメタボリックケージを用いて蛋白尿の測定を開始した。DM発症ラットとコントロールラットに各々GSK-3β阻害薬である2Z, 3E-6-bromoindirubin-3 -oxime(BIO)を腹腔内投与することにより糖尿病性腎症の発症への影響を検討した。DMラットにおいて1日尿量は有意に増加した。BIO投与群とコントロール群で、血圧及び血糖値に差はみられなかった。BIO投与群では蛋白尿が有意に低下しており、BIOによる糖尿病性腎症の発症抑制効果が確認された。細胞培養を用い、細胞を高血糖に暴露すると細胞内でのGSK3発現が増加することが確認された。しかしDMラットの糸球体を単離し、糸球体でのGSK-3βmRNAの発現を検討した実験では、その発現には変化が認められなかった。また高濃度のブドウ糖に暴露した細胞ではTGF-β1の発現が増強していた。この細胞にBIOを投与するとTGF-β1が低下することが認められた。またDMラット糸球体で増強していたTGF-β1蛋白はBIO投与で有意に抑制された。これらの検討によりBIOによる腎障害抑制効果にはTGF-β1が関与することが示唆された。またGSK-3β阻害効果があるバルプロ酸を用いて同様の検討を行った。低容量のバルプロ酸投与では現在までのところ血糖値や蛋白尿に有意な変化は認められていない。
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