6週齢のSDラットに片腎摘出術を行い、その1週間後に(1)コントロール群、(2)高食塩食群(8%NaCl)、(3)アルドステロン投与群(0.75μg/h、浸透圧ポンプ)、(4)アルドステロン+高食塩食群の4群に分け、4週間飼育後に堵殺して腎組織からタンパク質を抽出した。抽出したタンパク質をセリンプロテアーゼに対する合成基質(QAR-MCA)を用いたDouble Layer Fluorescent Zymography法(DLFZ法)により解析し、アルドステロシ+高食塩食群において特異的に活性が亢進する分子量約70kDaのセリンプロテアーゼを同定した。次に腎臓抽出タンパク質をイオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィーにより粗精製し、先のDLFZ法によって同定した酵素活性を指標にしながら目的のセリンプロデアーゼの粗精製分画を得た。そのタンパク質を1D gelを用いて分離し、shotgun LC-MS/MS法により解析した。以上の一連の操作により、アルドステロンと高食塩食によって酵素活性が亢進するセリンプロテアーゼとして、プラスミンの同定に成功した。プラス民ののKOマウスは生後すぐからの腎障害が強いため、実験に用いることが出来なかったが、プラスミン阻害活性をもつ合成セリンプロテアーゼ阻害薬のメシル酸カモスタットを用いて、アルドステロンと食塩によって惹起される腎障害に対する効果を検討したところ、著明な改善効果が得られた。腎臓の繊維芽細胞にプラスミンを投与すると、線維化マーカーやMCP-1などの炎症マーカーの上昇が認められ、メシル酸カモスタットの投与により、これらはすべて抑制されていた。これら一連の実験結果はアルドステロンと食塩によって惹起される腎障害にプラスミンが深く関与していることを示唆し、その阻害薬がヒトの腎疾患治療薬になりうることが期待される。
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