尿中FSP1の臨床的意義について検討した。尿中FSP1は、腎生検標本の全糸球体の20%以上に細胞性あるいは線維細胞性半月体を認める症例を、感度91.7%、特異度90.2%で検出できることが明らかとなった。一方、線維性半月体が大多数を占めるような症例(不可逆的に進行した症例)では、尿中FSP1は検出されなかった。したがって、尿中FSP1は緊急加療を要する活動性糸球体疾患を検出するのに有用であると同時に、ANCA関連腎炎の中で治療しても回復が見込めないような症例の検出も可能であると考えられた。本結果をアメリカ腎臓学会誌に掲載した。本検討でわれわれが開発したELISA測定系は、検出感度が1ng/mlであり高感度ではなく、測定時間も10時間必要とした。そこで、産学連携により、高感度・短時間測定系の開発を行った。現在のところ、測定感度が5倍以上上昇し、測定時間が2時間のELISAキットが開発されている。 基礎的検討では、ポドサイトでFSP1が過剰発現する遺伝子改変マウス(FSP1.TG)およびFSP1ノックアウトマウス(FSP1-/-)を、MRL/lprマウスと10回バッククロスすることでループス腎炎自然発症モデルを作製し、FSP1の糸球体保護作用の有無について検討した。FSP1発現の有無により腎病変に有意な差は認められなかった。この原因は、MRL/lprマウスにおける腎病変の出現は個体差が非常に大きいことにあると考えられた。今後はモノクローナル抗体惹起性ループス腎炎など、安定的に半月体形成が見られるモデルで再検討することが必要である。
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