研究概要 |
慢性腎臓病(CKD)では高率に心血管疾患(CVD)が合併するためCKDの治療においてはCVDの治療も併せて施行する必要がある。本研究は平滑筋関連蛋白であるカルポニンのうち中性カルポニンの誘導を介しCKD,CVDの双方の治療の可能性を試みるものである。まず中性カルポニントランスジェニックマウス(nCN-Tg)を作成し、それにアドリアマイシン腎症を誘導する予定であったが、作成したnCN-Tgにおいてwild typeのマウスと比較し耐糖能の違いの存在が疑われたため、その確認に大幅に時間を取られた。糖負荷試験や膵臓の組織学的検討なども施行した。これらの面での有意な違いは認められなかったが、マウスの性差や加齢による違い、レプチンをはじめとする糖代謝に関連するメディエーターの発現の差、さらにインスリン負荷試験の施行も含め引き続き検討中である。またこのため当初は予算の予定に入れていなかったマイクロプレートリーダーの購入が必要となった。研究開始前には全く考えていなかったカルポニンと糖代謝との関連という新しい観点の可能性が生じており、それらがCKDとCVDの双方の治療に結びつく期待を持って実験を継続している。以上の理由により、平成21年度予定のアドリアマイシン腎症や高脂肪食下での飼育による腎と心、大動脈の組織障害がwild typeのマウスと比較しnCN-Tgにおいて軽減化することの証明についての実験の一部は次年度へ繰越となったが、いずれにしても本研究開始時の中性カルポニン誘導によるCKD,CVDの同時治療の可能性については変化なく、これについて明らかにすべく研究を遂行したいと思っている。
|