研究概要 |
慢性腎臓病(CKD)における心血管疾患(CVD)の合併大きな問題である(心・腎連関)。平滑筋関連蛋白であるカルポニンには3つのアイソフォームが明らかにされている。本研究では中性カルポニン(nCT)の誘導を介してCKD,CVD双方の治療の可能性を試みた。nCTの作用は不明の点が多いが、細胞骨格における何らかの生理学的作用を担っていることが予測されており、現時点で明らかにされているのは平滑筋細胞の遊走の抑制や、その過剰発現による細胞増殖抑制作用などである。Cadmium sulfateの腹腔内投与時のみに全身諸臓器におけるnCT発現が誘導されるnCTトランスジェニックマウス(nCY-Tg)に進行性腎線維化モデルである一側尿管結紮モデルを作成し、wild typeマウスに作成した場合に比し、腎線維化の先行病変としての間質における増殖細胞やマクロファージ浸潤が抑制されることを示した。このnCTの抗炎症作用が心・腎連関の進行に関与する因子となりうるかを確認するため、約2年間飼育し、月に7-10日のcadmium sulfateの投与を施行した高齢のnCT-TGの腎と心の組織学的変化をwildtypeの高齢マウスのそれと比較検討した。体重当たりの腎・心の臓器重量には差がなかったが、腎のマクロファージ浸潤やI型コラーゲンの染色性はnCT-TGで抑制されていた。マッソン染色で評価した腎・心の線維化もnCT-TGで抑制された。以上よりnCT誘導はCKDにおける心・腎連関に対する治療の可能性を示唆するものと考えられる。
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