現在慢性腎臓病(CKD)患者数は1330万人とされ、「新たな国民病」とされている。CKDの進行による透析導入患者数は爆発的に増加し(30万人超)、患者負担のみならず透析にかかわる莫大な医療費の増大は大きな社会問題となっている。我々はこれまで、異種胎仔の腎臓発生部位の体内環境を用いてヒト間葉系幹細胞 (MSC)からラット大網内に尿排泄能を獲得したヒト再生腎臓を樹立することに成功した。さらに、摘出した発生初期の後腎組織を大網内に移植することにより、生体内で腎臓発生の微小環境を再現し、骨髄内間葉系幹細胞(MSC)を動員し移植後腎内で成熟腎細胞に分化誘導できることを証明した(胎生組織ニッチ法)。そこで本年度では、また自殺動物作成による純粋自己組織樹立に挑戦した。 我々のシステムは樹立された再生腎臓が異種の組織が混入してしまいキメラ臓器となることが臨床応用に向けた大きなハードルとなる。したがって樹立した再生腎臓から異種の部分を排除するシステムの開発を行った。マウスの実験ではタモキシフェンでアポトーシスを誘導する「自殺マウス」を作成し、異種部分が不要となった際に異種部分を排除できることを確認できた。そこでブタを用いたスケールアップとして、ヒトに投与が認められているAZT存在下でTmpk遺伝子を発現するシステムを導入した。Tmpkブタの作成にむけて、胎仔から得られた線維芽細胞が実際にAZT存在したでアポトーシスを起こすことを確認した。
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