研究課題
背景 髄質嚢胞形成と高尿酸血症を特徴とする家族性間質性腎炎の一病型として、若年性高尿酸血症腎症/髄質性嚢胞腎複合体(Familial Juvenile Hyperuricemic Nephropathy (FJHN)/Medullary Cystic Kidney Disease (MCKD) complex)と呼ばれる疾患範疇がある。FJHN/MCKDの30-40%はUromodulin変異が原因であるが、残り60-70%の症例の疾患遺伝子は未だ不明である。目的 申請研究では、優性遺伝様式で集積するFJHN/MCK家系(Uromodulin変異はないことを確認済み)の疾患遺伝子を明らかにする。さらに本症例から得られる間質性障害の分子機序を基に、新しい診断・治療法開発のための基盤を整える。成果 申請者らは、FJHN/MCKDの大家系(Zhang H, Am J Kidney Dis 1999)の調査を進めた。(1) 患者調査: 連鎖解析の判定をより確実にするため、新たに家系内7名の臨床情報の収集し、検尿(尿蛋白)、採血(クレアチニン、シスタチンC)、尿酸クリアランスの測定を行った。うち3名は罹患者と考えられ、疾患遺伝子の位置を確認する上で、重要な情報を得た。(2) 疾患遺伝子の探索: 患者9名と健常者17名について全ゲノムSNP多点連鎖解析を行い、染色体の2か所でロッド値のピークを得ている(新潟大学成田一衛教授、東京大学辻省次教授との共同研究)。現在患者の全エクソーム解析を行うために、国立遺伝学研究所・人類遺伝学部門・井之上逸朗教授との共同で、準備を進めている。意義・重要性 進行性腎障害により腎不全に至る予備軍を慢性腎臓病という新しい疾患概念で取りまとめ、早期治療を講じる対策が進められている。本研究成果で、腎尿細管間質障害の疾患因子が明らかになり、治療薬開発や予防方策の確立に繋がると期待される。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
日本腎臓学会誌
巻: 52 ページ: 914-923
Nephrol Dial Transplant.
巻: 25(6) ページ: 1785-1795
Nat Genet.
巻: 42(1) ページ: 72-76