研究概要 |
血清学的に高IgG4血症をもち、病理学的に病変組織中への顕著なIgG4陽性形質細胞浸潤を呈する全身性の多臓器障害性の疾患を全身性IgG4関連疾患と呼ぶことが提唱され、IgG4関連尿細管間質性腎炎の存在が明らかにされてきている。2001年Hamanoらが、自己免疫膵炎を報告して以来、様々な病態での高IgG4血症との関連が報告されている。腎障害もそのうちの一つであり、症例報告数は増加している。このIgG4の高値を示す病態は、相互に合併することが多いことも示され、IgG4が関連する全身性疾患(IgG4-related systemic disease)の存在が提唱されるようになってきた。腎障害を示した症例の半数以上は、間質性腎炎の所見を呈している。また、以前からIgG4関連疾患であると提唱されていた膜性腎症との合併例も報告されている。実際には、中年以降の患者に間質性腎炎という形で発症することが多いが、他臓器のIgG4関連疾患の症状を主訴として受診し、合併症として診断されることも多い。特徴的なIgG4産生の亢進がどのような免疫状況下で起こるのかを明らかにするために、生検腎組織からのサイトカインmRNAの発現を解析し、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、本態性間質性腎炎などの他疾患による間質性腎炎のそれと比較した。IgG4関連尿細管間質性腎炎では、IL-4,IL-5などのTh2サイトカインとIL-10,TGF-βなどの制御性T細胞由来サイトカイン、さらに転写因子FoxP3の産生が増強していた。IFNγやIL-12などのTh1由来サイトカインやIL-6,IL-17などのTh17関連サイトカイン産生は認められなかった。以上のことからIgG4関連腎疾患は、Th2とTregが中心的に働く病態であると言えるかもしれない。今後はこれらのT細胞群が活性化する機序の解明に向けて、解析を進める予定である。
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