研究概要 |
平成22年度報告書にも記載した通り、AQP11ノックアウトマウス腎の嚢胞上皮細胞にはCFTR(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator)が豊富に発現していた。そこでこれについて詳しく検討したところ、CFTRは生後14日の野生型マウスの近位尿細管上皮細胞にもある程度発現していが、AQP11ノックアウトマウス腎においては皮質深部の近位尿細管細胞で発現が大きく増強していた。以前の我々の検討からこれらの近位尿細管上皮細胞は将来的に嚢胞を形成することが判明している。従って、CFTRはAQP11ノックアウトマウスの嚢胞形成に関与していることが推察されたが、実際に生後21日になると野生型マウスにおけるCFTRの発現に変化はほとんどないものの、AQP11ノックアウトマウス腎においては皮質深部のCFTR発現細胞は嚢胞上皮となっていた。以上からCFTRの発現ととAQP11ノックアウトマウスにおける多発性嚢胞腎発症には深い関連があると判断し、CFTR阻害実験を行った。AQP11ノックアウトマウスの腹腔内にCFTRの阻害薬であるCFTR(inh)-172(C2992, Sigma-Aldrich, Inc.)を5mg/kg of body weight/dayとなるように、生後14日から21日までの7日間、12時間毎に投与した。対象として同体積の生理食塩水を同様にAQP11ノックアウトマウスの腹腔内に投与した。生後21日に腎臓を取り出しPAS染色標本を作製したが、残念ながらAQP11ノックアウトマウスの嚢胞形成には、嚢胞の数や大きさの点でも変化は見られなかった。これは、CFTRとAQP11ノックアウトマウス腎の嚢胞形成に関連がないと考えることも可能であるが、CFTR阻害薬(CFTR(inh)-172)の投与方法(量あるいは間隔)に問題があった可能性もあり、結論を下すには更なる検討が必要と考えられた。
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