研究課題
眼症状を伴う遺伝性近位尿細管アシドーシス(OMIM60428)は重症の酸血症による成長障害に加え、失明に至る重度の視力障害、片麻痺を伴う片頭痛、精神発達遅延など多彩な臨床症状を呈する難病であり、有効な治療法は未だ確立していない。現在までに12種類のナトリウム重炭酸共輸送体NBCe1変異が同定・解析され、NBCe1機能低下の原因として異なる分子機序が働いていることが明らかになっている。本研究はまずNBCe1の早期停止型変異W516Xノックインマウスの表現系を明らかにした後、この変異に対する低分子化合物PTC124によるread-through効果をin vivoの系で確認するとともに、in vitroの系での解析も合わせ、作用機序の詳細や至的条件を同定する目的で立案された。作成されたW516Xノックインホモマウスは予想通り近位尿細管におけるNBCe1発現が著明に減少しており、血中重炭酸濃度4mM耐程度の重度の酸血症と生長障害を呈していた。ホモマウスから単離した近位尿細管におけるNBCe1活性と重炭酸再吸収量は共に野生型の20%以下と著明に低下しており、NBCe1の近位尿細管重炭酸再吸収における重要性が再確認された。未治療のホモマウスは酸血症のため生後20日程度で全例死亡してしまうが、アルカリ治療によって生後2ヶ月程度まで延命が可能となった。そうしたホモマウスの眼を観察すると角膜浮腫による角膜混濁を呈していた。以上よりヒトの眼症状を伴う近位尿細管アシドーシスをよく再現できる動物モデルが作成されたため、現在invivoおよびinvitroの系でPTC124の効果を検討している。
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