HAI-1Bは肝細胞増殖因子活性化因子に対する阻害因子であり、セリンプロテアーゼインヒビターである。HAI-1Bはプロスタシンと共に臓器で発現し、プロスタシン活性の制御に関わっていることを強く示唆されている。また、プロスタシンによるENaCの活性化機構を介してNa代謝調節、高血圧の発症にHAI-1Bが関わっている可能性が非常に高いことも示されている。そこで、生体内においてHAI-1BがNa代謝調節、高血圧に関わっていることを証明し、さらにHAI-1Bリコンビナント蛋白を高血圧発症モデル動物に投与することにより高血圧の治療に応用することが本研究の目的である。 本研究では、平成21年度にHAI-1BのcDNAをマウス集合尿細管細胞へ発現させ、電気生理学的な手法により上皮型ナトリウムチャネル(ENaC)によるナトリウム電流が低下することを証明した。平成22年度にはまず、HAI-1Bの腎遠位尿細管特異的ノックアウトマウスを作製したが、HAI-1Bの腎遠位尿細管特異的ノックアウトがうまく行えておらず、平成23年度に再作成する予定である。また、HAI-1B過剰発現マウスも作製し、血圧、尿中ナトリウム排泄、各臓器障害の有無などを観察する。さらにヒトHAI-1Bリコンビナント蛋白を作製し、これがプロスタシンの活性を抑制することを確認した上で高血圧モデルラットに投与し降圧効果を確認する。また、HAI-1BのELISAキットを使用し、高血圧患者の尿中HAI-1Bを測定し、ヒト高血圧におけるHAI-1Bの役割について明らかにしていく。
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