研究概要 |
「脳への骨髄由来細胞の分布不全が脳内レニン-アンジオテンシン系および酸化ストレスの抑制不全をひきおこし高血圧の病態に関与している」という仮説のもと平成22年度は以下の実験を行った. 目的1:高血圧ラットの骨髄由来細胞においてその分布・生着能にちがいがあるかを調べる. (1)標識骨髄由来細胞(間葉系幹細胞)の自家移植実験 昨年度行った尾静脈からの注入実験では標識骨髄細胞の各臓器への分布が明らかでなかったため,今回,下大静脈ヘカテーテルを留置しDiI識骨髄細胞(100万個/0.1mL)を下大静脈へ確実に注入しその分布を調べた.標識細胞は肺、脾臓、腎臓で観察できた.肺ではDiI陽性細胞は肺胞壁に分布し,vVFが共陽性で内皮様の形態をしていた.観察切片内では心臓、脳への分布は明らかでなかったが今後詳細な検討が必要である.高血圧ラットと正常血圧ラットでの分布の違いに関しても同様に今後詳細な検討が必要である. 目的2:骨髄由来細胞はレニン-アンジオテンシン系および酸化ストレスを抑制するかを調べる. (1)骨髄由来間葉系幹細胞におけるレニン-アンジオテンシン系の構成要素およびMn-SODの発現 培養骨髄由来細胞は内皮細胞に比べACE2とMn-SODの発現が多かった.AT1受容体およびAT2受容体の発現は骨髄由来細胞と内皮細胞で明らかな違いはなかった.Mn-SODの発現は高血圧自然発症ラット(SHR)で対照の正常血圧ラット(WKY)に比べ多かった. (2)骨髄由来間葉系幹細胞に対するアンジオテンシンII(Ang II)刺激実験 Ang II(100pM)刺激は24時間後のMn-SODの発現を増やした。Ang II刺激によるMn-SODの発現増加はSHR由来骨髄細胞よりWKY由来骨髄細胞で大きかった.今後数を増やし統計学的検討を行う予定である.
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