尿毒症性心筋症(Uremic Cardiomyopathy)の病態には自己免疫的機序が関与していることが想定された。本年度は、1.腎不全動物を用いて、UC発症モデルの構築、2.UC発症モデルに対するinterventionの可能性を検討した。 5/6腎摘ラットに高タンパク食負荷を行い、4週後に心臓の組織を検討したところ、既に単核球を中心とした浸潤がみられ、8週後には明らか線維化が確認できた。病変部にはtype I collagen、TGF-βやfibronection等の遺伝子、タンパク発現が亢進していた。血清中の抗心筋抗体(β1AR)の陽性率はcontrolに比較して有意に高かった。 腎不全に伴う他の病態機序、特にrenin-angiotensin系異常及びCKD-MBDの関連を検討するために、angiotensin変換酵素阻害薬、calcimimeticsを投与したところ、各々薬剤は心筋線維化を抑制した。また、これらの薬物の効果は相加的であった。これらのinterventionにはよる抗心筋抗体の出現頻度の変化はみられなかった。UCの病態は、液性免疫の異常だけでなく、腎機能低下に伴う様々な機序により出現する可能性が示唆された。今後、免疫抑制剤等のinterventionの可能性について検討する必要がある。 疫学的にも抗心筋抗体の病的意義を検討した。以前、抗心筋抗体、抗β2アドレナリン受容体抗体(β1AR Ab)、抗ムスカリン受容体抗体(MR Ab)を測定した同じcohort(n=320)を用いて、再度これらの心筋抗体価及び有精鶏卵を用いた心筋抑制物質のbioassayを行っている。前回の測定から約2年経過しており、イベント等との関連を評価することにより、臨床的な抗心筋抗体の意義を検討する。
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