我々は、先ず、二次性副甲状腺機能亢進症患者を対象とし、多数の候補遺伝子(358個)について遺伝子多型と血清PTH値との関連性を検討した。即ち185名の血液透析患者をiPTH値200pg/ml以上か以下かで2群に分けて副甲状腺ホルモンに関連する遺伝子多型を探索的に解析した。その結果心筋L型Ca^<2+>チャネル(CACNA1C)がPTH分泌に関連する可能性を見出した。さらにCACNA1Cの遺伝子上に数個の遺伝子多型が有意な偏位を認めたため、本遺伝子上の80個の遺伝子多型を測定し、ハプロタイプ分析を行った。Haplotype解析においても、心筋L型Ca^<2+>チャネル(CACNA1C)がPTH分泌に関連する可能性が高かった。従来信じられているCa感受受容体による副甲状腺ホルモンの分泌調節に新たな分子機構の関与が想定されたことになる。 そこで、平成22年度は、副甲状腺のCa流入と関連するKlotho蛋白に焦点を当てて検討を行った。Klotho蛋白は細胞膜直下の輸送小胞様構造でNa+/K+ATPaseと結合していると推定され、細胞外のカルシウム濃度の低下に素早く応答してNa+/K+ATPaseの細胞表面へのリクルート、即ち、Na+/K+ATPaseの機能を調節している。血清カルシウム濃度が低下すると副甲状腺ホルモンの分泌が誘導されるが、Klothoを欠失するとNa+/K+ATPaseの機能が働かず、低Caのシグナルを感知出来ないためにPTH分泌応答能が顕著に低下すると考えられている。 先ず、二次性副甲状腺機能亢進症患者の副甲状腺摘出標本で、膜型Klotho蛋白の免疫染色を行った。副甲状腺の結節病変と過形成病変とでは膜型Klotho蛋白の染色性に差異があった。 また、Klotho蛋白と副甲状腺のCa応答の関連を評価するために、ヒトにおいては血清分泌型Klothoを測定している。 さらに、二次性副甲状腺機能亢進症モデルであるアデニンマウスを作成中である。
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