研究概要 |
腎臓の働きは体液恒常性維持であり、その中心的役割を司っているのが抗利尿ホルモン(arginine vasopressin,AVP)とアルドステロンである。AVPには2種類の受容体が腎臓に発現し、集合尿細管主細胞血管側膜に発現しているV2受容体(V2R)は、抗利尿作用に関連する。それに対し、集合尿細管介在細胞管腔側膜に発現するV1a受容体(V1aR)の生理的機能に関しては、不明な点が多かった。一方、アルドステロンの受容体であるmineralocorticois receptor(MR)は、集合尿細管に存在する。私たちはV1aRノックアウト(KO)マウスと世界に先駆けてSV40トランスジェニック(Tg)ラットより新しく作成した集合尿細管介在細胞cell lineを用いて、V1aRの機能を明らかにする研究を行ってきた。V1aR-KOマウスでは、RAS系が抑制され、低血圧及びV2Rを介した尿濃縮作用も低下することを私達は明らかにした。そこで、V1aR-KOマウスの酸塩基平衡状態を調べたところ、4型腎尿細管性アシドーシスを呈することがわかった。さらに、集合尿細管介在細胞cell lineを用いてV1aR遺伝子をノックダウンすることで、細胞レベルでのV1aRによるアルドステロン制御機構を明らかにし、4型腎尿細管性アシドーシスは、集合尿細管介在細胞のV1aRの機能異常とそれに引き続くH-ATPase,HK-ATPase,Rhcgの機能異常により惹起されることを明らかにした。アルドステロンは、その受容体であるMRの細胞質から核内への輸送を促進するが、その過程におけるV1aRの役割を検討した。アルドステロンは、RCC-1活性を上昇させ、バゾプレッシンはRanGap1活性を低下させることで、ともに核内Ran減少を来たす事で、MR核内への輸送を司り、またsiRNAでV1aR遺伝子をノックダウンすると、MRの核内輸送がブロックされることからMR核内輸送にV1aRが必須である事が明らかとなった。
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