現在、日本では、6種類のアンジオテンシンII 1型受容体ブロッカー(ARB)が使用されている。ARBはG蛋白共役型受容体(GPCR)のアンジオテンシンII 1型受容体へ結合する。GPCRでは、アンタゴニスト、アゴニスト、インバースアゴニストの分子メカニズムの検討が盛んである。したがって、ARBの中でもアンタゴニスト作用のみでなく、インバースアゴニスト作用を持つものが優れたARBである。さらに、強力なARBを作製するために、まず、逆にインバースアゴニスト作用を持つARBのその作用がなくなるようにARBのデザインを実施した。これにより、ARBのどの部分がインバースアゴニスト作用に重要であるかを検討した。ARBのオルメサルタンのカルボキシル基をカルバモール基に置換すると、イノシトールリン酸産生能に関してインバースアゴニストではなくアンタゴニストとなった。さらに、フェニール基を付加すると、アンタゴニストがアゴニストとなった。このように、わずかに化学構造を変えることにより、インバースアゴニストからアンタゴニスト、アゴニストへその薬理学的性質を変えることができた。また、その際、受容体がどの様に構造を変化させているかを検討するために、Substituted cysteine accessibility mapping(SCAM)studyを実施した。それにより、アンジオテンシンII 1型受容体の第3膜貫通部の構造変化に特徴があることがわかった。インバースアゴニスト、アンタゴニストとアゴニストは、同じアンジオテンシンII 1型受容体のアミノ酸部位を認識するが、それぞれのリガンドは、特徴的に第3膜貫通部の構造を変化させるということであった。このような発見は、ARBの生化学的特性を見いだし、今後の新たなARBの開発に役立つものと思われる。
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