多系統萎縮症(MSA)は成年期に発病する非遺伝性疾患であり、脊髄小脳変性症の中では最も頻度の高い疾患である。基本症状は進行性の小脳性運動失調、パーキンソニズム、自律神経障害である。画像診断では脳幹と小脳が萎縮する。組織学的には神経細胞や乏突起膠細胞にαシヌクレインが過剰に発現することから、これが病態に深く関与していると推定されている。しかし、その機序や原因は不明である。本疾患の発病素因解析を目的とした全ゲノム網羅的関連解析研究が国内外で複数のグループにより進行している。現時点では候補遺伝子として確定したものは知られていない。ゲノム多型として、近年、特定の領域が数Kb~数Mbの単位で欠失、重複、挿入などを示すことが明らかになった。この構造多型はcopy number variation (CW)として知られているもので、全ゲノムの20%程度を占めると推定されている。一卵性双生児例でもこのCNVに相違が認められる。この事実はCNVが個体発生の過程で生じることを示唆している。CNVが非遺伝性疾患の発病素因となる可能性のあることから、MSAのゲノム構造多型解析を計画した。対象は非血縁のMSA、健常者及び片方のみ発症した一卵性双生児である。対象の臨床診断は診察所見と画像診断をもとに、国際的に用いられている臨床診断基準に拠った。網羅的CNV解析はCNVゲノムワイドチップを用いた。一卵性の検証はSNPアレイ解析により行った。対照群と比較してMSA群にコピー数の偏りがないか、現在、検討中である。
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