今年度は、2つのテーマに関して研究を行った。1つは多発性硬化症(MS)患者におけるB細胞subsetのIFNβ投与群と非投与群、健常者群での比較検討と再発期・寛解期での比較検討、2つ目としてサイトカイン産生能を中心にMSのB細胞におけるToll-like receptor(TLR)9の免疫調節性機能に関して検討を行った。1つ目のB細胞subsetの研究では以下の結果が得られた。IFN投与群においてCD27及びCD80陽性B細胞の割合はIFN非投与群及び健常者群よりも有意に低値であった。一方、CCR5陽性B細胞の割合は、健常者群・IFN投与群に比べ非投与群で有意に高値であった。CD49dのB細胞での発現はIFN投与群において、健常者群より優位に低下していた。再発期と寛解期の検討では、CD80陽性B細胞並びにCCR5陽性B細胞の割合が、寛解期で優位に上昇していた。以上より、B細胞subsetはMSにおいて健常者と比較し違いがあり、それがIFN治療によって影響を受け、また、再発と寛解の時期によっても異なることが示唆された。一方、2つ目のTLR9の研究であるが、これは、TLRが自然免疫における病原体認識分子であり、MSにおける自然免疫の重要性が注目されていることから検討を行った。その結果、TLR9のアゴニストであるCpG DNA刺激によるB細胞からのIL-10産生はMS患者において健常者と比較して有意に低下しており、またB細胞のIL-10産生はメモリーB細胞におけるTLR9発現に相関していた。今回の結果、及びB細胞産生性IL-10がTh1細胞、Th17細胞、樹状細胞の機能を抑制するとの報告から、TLR9を介したB細胞への刺激はT細胞なども含むMSの免疫動態に影響している可能性が考えられた。
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