【背景】近年のMS有病率上昇の一因に衛生仮説が提唱され、その背景に自然免疫の関与が示唆されている。Toll-like receptor (TLR)は自然免疫での病原体認識分子であるが、自然免疫のみならず獲得免疫をも誘導する。TLR9はB細胞と形質細胞様樹状細胞に発現し、CpGDNAがリガンドに同定されている。一方、近年B細胞産生性IL-10による免疫調節性機能が注目され、MSでの低下が報告されている。MSにおけるTLR9を介した免疫調節性機能の可能性について検討することを目的とした。【方法】MS36例(再発期6例、寛解期30例)、健常者10例を対象とし、寛解期MS群は未治療10例、インターフェロン(IFN)β-1a治療10例、IFNβ-1b治療10例とした。対象者の末梢血を採取し、Flow cytometryでCD19陽性B細胞表面CD27、CD80、CD86とB細胞内TLR9の発現を測定した。またB細胞を分離し、0.25μMのCpGDNA(ODN2006)で24時間刺激したのち、ELISAで上清中のIL-10、IL-12(p40)、TNF-α、Lymphotoxin-αを測定した。【結果】CpGDNA刺激によるB細胞のIL-10産生はMS全体で有意に低く、IL-12(p40)産生は再発期MSで有意に高かった。memory B細胞におけるTLR9のMean Fluorescence IntensityはMSで有意に低く、またB細胞のIL-10産生と有意な正の相関を呈した。【結論】MSではTLR9を介したB細胞のIL-10産生が低下しており、これはmemory B細胞のTLR9発現低下に起因している可能性があることが判明した。
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