研究概要 |
Lipid raftsはアミロイドss蛋白(Aβ)の産生部位であり蓄積部位でもあり,最近はAβ oligomerによる神経毒性発揮部位と考えられるようになっている.そのため,lipid raftsはアルツハイマー病(AD)治療の標的部位として注目されている.1)lipid raftsが神経変性疾患の共通した蛋白凝集開始部位であるかどうかを3種類の神経変性疾患モデルマウスを用いて検討した.Aβ発現マウスTg2576,我々の開発したtau発現マウスTgTauP301Lおよびα-synuclein発現マウスTgαSYNでその早期からlipid raftsに発現蛋白の蓄積が認められ,経時的に増加した.また,それぞれのoligomerの蓄積も認められた.高齢マウスにおいて細胞内封入体はlipid rafts markerであるflotillinとの共存を認めた.lipid raftsは神経変性疾患の共通した蛋白凝集開始部位と考えられた.2) TgTauP301Lと細胞内コレステロール輸送障害を起こすNiemann-Pick type C1(NPC1)モデルマウスを掛け合わせた.TgTauP301L x NPC1マウスではAβ,tau,α-synucleinがコレステロールと共にlipid raftsに蓄積し,リン酸化tau陽性のpretangle形成が促進された.コレステロール障害はlipid raftsへの原因蛋白蓄積を介してAD発症を促進する可能性が示唆された.3) Tg2576とTgTauP301Lとのdouble transgenic mouse (double Tg)を作製し、Aβ oligomer蓄積によるtauopathyと神経毒性の誘発機序の解明を行った.double Tgでは樹状突起のlipid raftsにリン酸化tauが蓄積していた。Lipid raftsにはFynの著増とNMDA receptor、AMPA receptorの増加が認められた。postsynaptic lipid raftsのAβ amyloidosisによって誘発されたtauopathyはグルタミン酸神経毒性を介したシナプス障害と神経細胞死を引き起こす可能性があると考えられた。以上の検討からlipid raftsを標的とした蛋白凝集抑制は神経変性疾患の共通した治療法になる可能性がある.
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