本年度は、in vivo遺伝子導入法を用いて、様々なTDP-43遺伝子プラスミドを導入した。GFPタグ付き野生型全長、変異型全長(M337V、A315T)遺伝子を電気穿孔法を用いて、マウス胎仔(E13)大脳皮質に導入した。導入マウスでは、GFP遺伝子の発現は認められるものの、野生型、変異型のいずれにおいてもヒト病理を反映するようなTDP-43封入体は観察されなかった。そのため、患者脳で蓄積が確認されているTDP-43のC末断片を発現するプラスミドを作成し導入した。同様に、野生型C末断片、変異型(M337V)C末断片遺伝子を導入した。これにより、野生型、変異型のいずれにおいても、TDP-43陽性封入体が細胞質内に確認された。生後21日齢の変異型C末断片導入マウスにおいて、封入体は抗リン酸化TDP-43抗体、抗活性化カスパーゼ3抗体、抗ユビキチン抗体において標識されるものが認められた。これらは筋萎縮性側索硬化症組織において観察される病理像を再現したものであり、本系が疾患モデルとして利用可能であることが示された。今まで、遺伝子組換えマウスなどを含め、ヒト病理像を再現したモデルは極めて希であり、本系は重要性が高いものである。 本系により、全長型TDP-43遺伝子導入のみでは、封入体形成はなされないが、C末断片型TDP-43遺伝子を導入すれば、封入体が形成されることが示された。現在まで、C末断片形成機構についてはその詳細が明らかになっていないが、本研究により、同機構が封入体形成に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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