研究概要 |
ラット脳塞栓モデル(Okuboら.2007)層において,tPA(アルテプラーゼ)による血栓溶解療法を行い,治療可能時間を超えた治療後に合併する脳出血に対し,抗VEGF中和抗体(RB-222)およびVFGF受容体2型阻害剤(SU-1498)の2つ薬剤の作用機序と効果の比較を行った. (1)いずれの薬剤もVEGFカスケード下流のメタロプロテアーゼ9(MMP9)活性化を有意に抑制し,さらに血管構築蛋白の分解を有意に抑制した. (2)いずれの薬剤も脳出血(ラット単位体積あたりのヘモグロビン量)を有意に抑制した. (3)しかしながら,5段階の生命・運動機能スケールの評価では,抗VEGF中和抗体のみ,対照群(コントロール抗体ないし溶媒)と比較し有意な予後の改善をもたらした. 以上より,抗VEGF中和抗体とVEGF受容体阻害剤では前者がより血栓溶解療法後の脳出血予防に有用である可能性が示唆された.この原因として抗VEGF中和抗体はVEGFシグナルカスケードの最も上流に作用するのに対し,SU1498はVEGF受容体2型を選択的に阻害する抗体で,その他のVEGF受容体(VFGF受容体1型等)の活性化が抑制できず,これらが,運動機能予後の差に現れた可能性が疑われる. 今後,抗VEGF中和抗体に絞り,その至適用量や投与可能時間,および抗VEGF中和抗体の種類ごとの影響,とくに半減期の影響について検討を行い,臨床試験につなげるための基礎データとしたい.
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