免疫グロブリン関連アミロイドーシスでは約20%の患者で難治性の末梢神経障害が見られる。その原因の一つとしてアミロイド前駆蛋白である血漿中free light chain(FLC)に神経毒性のあることが推測されており、それを明らかにすることが本研究の目的である。1年目は患者血漿からポリアクリルアミドゲルを用いて高純度のFLCを精製する方法を、2年目は脊髄神経節細胞を用いた神経毒性の解析手技を確立した。精製FLCは末梢神経障害のある免疫グロブリン関連アミロイドーシス患者3名と、そうした所見が臨床的に明らかでない同患者3名から得た。本年度は培養液中にその精製されたFLCを加え、神経毒性の有無について検討した。まず、ラット脊髄後根神経節を採取し、トリプシン処理を行なって神経細胞を単離。24穴プレート中でDMEM/F-12+10%牛胎児血清+神経成長因子を用い、3日間培養した。得られた脊髄後根神経節細胞を、FLCが一定の濃度になるように調節した培養液中でさらに3日間培養し、パラホルムアルデヒドで固定。神経根細胞に特異的に発現する抗マイクロチューブ関連蛋白抗体を用いて蛍光染色を行い、画像解析装置を用いて100ニューロンあたりの神経突起を有する細胞の割合、神経細胞の大きさ、神経突起の数、最長の神経突起の長さ、全神経突起の長さの総和を測定した。コントロールとしては精製FLCを含まない培養液中で培養した神経節細胞を用いた。その結果、末梢神経障害のないアミロイドーシス患者を含め全例で、コントロールと比較して上記指標の有意な低下がFLCの濃度依存的に確認された。臨床的に明らかな末梢神経障害のない患者から得られたFLCでも同様の低下が認められた。
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