研究概要 |
過去に名古屋大学神経内科に依頼のあった神経生検を通じて診断した症例および剖検例を用いてFAP ATTR Va130Metの臨床病理学的特徴の検討を行った.従来からの集積地の症例に比べ,集積地外の症例は,1.家族歴を有さない例が多い,2.50歳以上の発症例が多い,3.自律神経症状が明らかでない,4.解離性感覚障害を有さない,5.大多数の例が男性である,6.世代を経るごとに発症年齢が早発化する表現促進現象(anticipation)を認めないなどの点が異なることが確認された.病理学的にも,アミロイドーシスに特徴的といわれる小径線維優位の軸索障害をきたさない場合が多く,電子顕微鏡観察下でのアミロイドの形態も従来からの集積地例とは異なっていた.また,家族歴を認めなかった症例の検討では,約半数の例が慢性炎症性多発性脱髄性根神経炎(CIDP)と診断され,治療も行われていた例も認めた.また,生検標本の検索ではアミロイド沈着を認めない例も存在した.以上の結果から,非集積地の高齢発症のFAP ATTR Va130Metは,従来からの集積地の症例とは異なる臨床病理像を呈するため,高齢者の原因不明のニューロパチーではFAP ATTR Va130Metの可能性を積極的に疑う必要があると考えられた.また,腓腹神経生検ではアミロイド沈着を認めない場合もあり,病理所見が軸索変性主体で原因が明らかでない場合や,当初の臨床診断では説明がつかない病理所見を認めた場合は遺伝子診断を積極的に施行する価値があると考えられた.また,非集積地の高齢発症FAP ATTR Va130Metの自然歴を検討した.50例の検討では,経過は発症年齢に関係なく比較的均一であり,短期間のうちに症状が完成することが明らかになった.非集積地の高齢発症型FAP ATTR Va130Metは,従来型の集積地の若年発症型FAP ATTR Va130Metとは異なる経過を呈すると考えられた.
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