研究課題
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位及び下位運動ニューロンが選択的に変性していく神経変性疾患である。ALSの約90%は孤発性、約10%は家族性である。1993年に、家族性ALSの一部はCu/Zn superoxide dismutase (SOD1)の変異によることが発見された。その後、変異SOD1トランスジェニックマウスモデルの解析により、変異SOD1が神経細胞に対して毒性を発揮するだけでなく(自律性神経細胞毒性)、アストロサイトなどの非ニューロン細胞内の変異SOD1タンパク質が、ニューロンの変性を促進するという、非自律性神経細胞毒性機序による運動ニューロン変性の可能性が考えられている。本研究では、SOD1変異を有する家族性ALS患者由来induced pluripotent stem cell(iPS細胞)を用いて、変異SOD1転写を抑制することによるFALS治療薬を開発することを目的としている。これまで、京都大学医学部附属病院及び他病院神経内科通院中の変異SOD1を有するALS患者数名、あるいはSOD1変異を有さない他疾患患者から皮膚線維芽細胞を樹立し、その後、それらの細胞から、iPS細胞を樹立した。変異SOD1転写を抑制する低分子化合物(ヒット化合物)もしくは既存薬を1次スクリーニングにより同定した。さらに、確立された方法(Li et al. Nat Biotech 23:215-221, 2005 ; Okada et al. Stem Cells Equb 2008)を用いて、SOD1変異を有する家族性ALS患者由来iPS細胞をアストロサイトへ分化誘導し、1次スクリーニングにより同定した既存薬の効果を検証し、SOD1発現量を低下させるが細胞死は生じない既存薬を同定した。さらに本年度は、変異SOD1トランスジェニックアストロサイトとヒトiPS細胞由来運動ニューロンの共培養によって、運動ニューロン変性が生じることを見いだした。今後、その系における治療薬スクリーニング、あるいはヒトiPS細胞由来アストロサイトの効果を解析する。
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