研究概要 |
生後1-2日の変異型SOD1トランスジェニックマウス(G93ASOD1)および野生型マウス(WT)の脊髄からアストロサイト(AST)の初代培養を行い、胎齢12.5日の野生型マウス胎仔脊髄から分離した運動ニューロン(MN)と共培養した。WT-AST上のMNの生存率が高く軸索の伸長が有意に認められた。それぞれの共培養からmRNAを抽出しサブトランクション法によりG93ASOD1-ASTを使用した共培養において発現量が増加するcDNAを134個同定した。これらのcDNAは(1)G93ASOD1-ASTとの相互作用においてMNから産生が増加したcDNA,あるいは(2)G93ASOD1-ASTそのものから産生された,MN変性に関与するcDNAである可能性があると考えられた。ノザンプロッティングおよびin situ hybridizationを用いて,2.5ヶ月令の変異型SOD1トランスジェニックマウス脊髄において候補のcDNAの中から特に脊髄前角MNにおいて最も発現量の多い遺伝子についてトランスジェニックマウスを作成した。マウスはC57BL/6を用い,299個のマウス受精卵に遺伝子を注入し,ファウンダーマウスは25匹産まれた。15匹が1ヶ月令まで生存したため尾からDNAを抽出した。DNAをPCRで解析した結果,5匹のマウスに遺伝子の導入が確認された。この新しく作製したトランスジェニックマウスの脳と脊髄を用いてウェスタンブロッティングを行ったところ、導入遺伝子のタンパクの発現増加を認めた。しかし脊髄の病理検索では運動神経の変性死は認められなかった。今回の研究で同定した遺伝子群は、変異SOD1タンパク発現後に発現が増加する遺伝子だが、下流で発現が変化しても運動神経変性に関与しないタンパクが存在することがわかった。
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