研究課題
遺伝性脊髄小脳変性症の新規原因遺伝子同定を目的として、当施設で集積した常染色体優性遺伝性形式を示す脊髄小脳変性症家系のうち、トリプレット・リピート伸長を病的変異とする既知の病型(SCA1・SCA2・MJD/SCA3・SCA6・SCA7・SCA8・DRPLA)を除外した39家系、つまり未知の原因遺伝子変異による病型である可能性を含む家系の臨床的解析を行った。このうち22家系は神経学的評価および脳画像解析上、純粋小脳症状型に相当する病型で、均一の遺伝学的背景をもつ可能性も想定された。今後DNAマーカーを用いて上記以外の病型との遺伝学的連鎖および全ゲノム領域を対象とした連鎖解析を施行予定である。脊髄小脳変性症の病態研究については、両方向性に転写されるSCA8 CTG・CAGリピート伸長を病的変異とするSCA8(脊髄小脳失調症8型)に着目し、CTG方向の転写産物、つまり伸長CUG(exp)transcriptsの分子病態への関与を検討した。SCA8患者剖検脳およびSCA8トランスジェニックマウスの小脳神経細胞核内にCUG(exp)transcriptsの凝集体を同定し、それが転写調節因子MBNL1と共局在することを明らかにするとともに、MBNL1の機能不全をもたらすことが、GABA-A transporter4のスプライシングパターンおよび発現量を変化させることを明らかにした。さらにSCA8トランスジェニックマウスを用いた検討からは、GABA-A transporter4の転写調節異常に起因することが想定される小脳のGABA介在性抑制系の機能障害も明らかにした。以上の研究成果より、SCA8の病態におけるCUG(exp)transcriptsを介したRNA gain-of-functionのメカニズムを本研究により初めて明らかにした。
すべて 2009
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