研究概要 |
G蛋白質共役型受容体(GPR)は、7回膜貫通型の受容体で、リガンド結合によりG蛋白質を介し、様々な細胞内セカンドメッセンジャーシステムの活性化や抑制に関わっている。中でもGPR3, GPR6, GPR12は中枢神経系に豊富に発現するG蛋白質共役型受容体(GPR)であり、恒常的にGsと結合し細胞内cAMPレベルを上昇させる非常にユニークな機能を持つ受容体である。これまでに、これら受容体の神経突起伸長やミエリン阻害との関連性や、小脳顆粒細胞の分化制御因子であることを示してきた。本年度は、これらの受容体が神経細胞生存に与える影響を検討した。初代小脳顆粒細胞は高カリウム(25~30mM)培養条件下では生存、分化するが、低カリウム濃度(5~10mM)に戻すと、その殆んどの細胞がアポトーシスを起こすことが知られている。我々は、二の小脳顆粒細胞のアポトーシスモデルを用いて、これら受容体の神経細胞生存への効果と、抗アポトーシス効果をWST-1アッセイ法とTUNNEL染色法によりそれぞれ解析、検討した。予測通り、GPR3, GPR6, GPR12を神経細胞に導入した群は、コントロール群に比し、低カリウム培養条件下での生存が増強され、アポトーシス陽性細胞は減少した。一方、GPR3ノックアウトマウスから採取した小脳顆粒細胞は、野生型マウスから採取した細胞と比しアポトーシス陽性細胞は増加していた。さらに、低酸素下(1% O2/5% CO2)におけるGPR3の抗アポトーシス効果をTUNNEL染色にて検討したところ、GPR3siRNAを小脳顆粒細胞に導入し遺伝子発現を抑制した群では、コントロール群と比し、有意なアポトーシス陽性細胞数の増加が観察された。今年度の研究では、GPR3, GPR6, GPR12が神経細胞生存効果を有し、低酸素条件下に於いても神経保護効果が明らかになった。来年度は、これらの結果をもとにGPR3ノックアウトマウスに脳虚血を負荷することにより、生体内で脳虚血下でのGPR3の神経生存効果を検討する。
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