研究概要 |
GPR3,GPR6,GPR12は中枢神経系に豊富に発現するG蛋白質共役型受容体(GPR)であり、恒常的にGsと結合し細胞内cAMPレベルを上昇させる非常にユニークな機能を持つ受容体である。これまでに、これら受容体の神経突起伸長やミエリン阻害との関連性や、小脳顆粒細胞の分化制御因子であることを示しており、昨年度は小脳顆粒神経細胞のアポトーシスモデルを用いて、これら受容体が神経細胞生存に関与し、さらに低酸素環境下においても神経保護効果を示すことを明らかにした。本年度はGPR3ノックアウトマウスを用いて、In vivoでのGPR3を介した神経保護作用を検討した。小脳顆粒神経細胞は生後間もなく外顆粒細胞層で盛んに増殖し、その後内顆粒細胞層へと移動し成熟した神経細胞になることが知られている。さらに、GPR3は生後7日目頃から内顆粒神経細胞層に存在する小脳顆粒神経細胞に発現が増加することが知られている。そこで、生後7日目のGPR3ノックアウトマウスと野生型マウスの小脳組織切片を作製し、抗cleaved caspase-3抗体を用いた免疫組織化学に供した。Caspase3陽性細胞はGPR3ノックアウトマウスで、内顆粒神経細胞層において、野生型マウスと比し有意に増加していた。一方で、外顆粒神経細胞層や分子層でのCaspase3陽性細胞数には両者間で有意な差はなかった。さらに、GPR3の脳虚血環境下での神経細胞保護効果を検討するために、7週齢のGPR3ノックアウトマウスと野生型マウスに一過性中大脳動脈閉塞モデルを作製し、梗塞サイズをTTC染色により解析した。GPR3ノックアウトマウスでは野生型マウスと比較して線状体を中心に梗塞サイズの拡大を認めた。これらの成果は、GPR3の神経保護効果をin vivoにおいても示すものであり、今後治療へと応用を考える上でも非常に重要な結果が得られたと考えられる。
|