研究概要 |
GPR3,GPR6,GPR12は中枢神経系に豊富に発現するG蛋白質共役型受容体(GPR)であり、恒常的にGsと結合し細胞内cAMPレベルを上昇させる非常にユニークな機能を持つ受容体である。これまでに、研究代表者はこれら受容体の神経突起伸長やミエリン阻害との関連性や、小脳顆粒細胞の分化制御因子であることを示してきた。本研究課題に関し、我々は昨年度までに、1)GPR3,GPR6,GPR12が小脳顆粒神経細胞の生存に関わること2)GPR3が低酸素環境下においても神経細胞生存に関与すること3)GPR3が発生段階の小脳顆粒神経細胞において神経細胞性存意関わること4)GPR3ノックアウトマウスの一過性中大脳動脈閉塞モデルを用いて、脳虚血環境下においてもGPR3が脳梗塞縮小効果を発揮することを示してきた。しかしながら、これら受容体を介した神経細胞保護効果のメカニズムに関しては不明であった。そこで、本年度はこれら受容体の下流に存在するシグナル伝達メカニズムに関して検討した。生後7日後のラット小脳から採取した小脳顆粒神経細胞にGPR3発現プラスミドを遺伝子導入した後に、様々な蛋白キナーゼ阻害剤を培地中に添加し、神経突起の長さを評価した。我々の研究グループの既報通り、GPR3を介した神経突起伸長は、PKA阻害剤であるKT5720(2μM)により阻害されたが、PI3キナーゼ阻害剤であるLY294002(50μM)やMAPキナーゼ阻害剤であるU0126(10μM)にても神経突起伸長が阻害されル事が明らかになった。更に、GβγスカベンジャーであるGRK-CTをGPR3と同時に発現させると、GPR3を介した神経突起伸長は阻害された。これらの結果から、GPR3下流にはこれまで報告してきたGαs-PKA経路に加え、Gβγ、PI3キナーゼ、MAPキナーゼを介した経路が関与している可能性があることが明らかとなった。
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