研究概要 |
本研究では,神経難病におけるmicroRNAの役割の解明を目的とする.神経変性疾患では病気の進行を遅らせることは現状では全く不可能である.また炎症性神経疾患も,殆どが慢性で難治性の経過をたどる.本研究での対象疾患は筋萎縮性側索硬化症(ALS)と多発性硬化症(MS)としている.それらの神経難病において,microRNAのコード領域およびその周辺の調節領域のSNP,各種変異,それに,microRNAによって調節される疾患感受性遺伝子の領域を患者と対照群で比較検討した.特にmicroRNA,およびmicroRNAによって調節されると推測される疾患関連遺伝子の3'UTRの領域に候補をしぼり,可能な範囲で患者での全配列の決定を進めた.具体的には,これまでに報告された大規模スタディーに基づいた疾患感受性遺伝子,家族性ALSの原因遺伝子,それに病態に関与すると推測された遺伝子を重点的に,MSに関しては,IL7R,IL2R,CD58など,合計14種類の遺伝子.ALSに関しては,FUS,Alsin,UNC13Aなど,合計16種類の遺伝子を,データベースおよびin silicoの方法で選択した,それら遺伝子の3'UTRの領域の,特に既知のmicroRNAの標的となり得る領域を重点的に,可能なかぎり3'UTRの全配列の決定を進めた.個々の遺伝子での患者での有意な変異は見つかってないが,それぞれの遺伝子変異の組み合わせと他プロジェクトとのデータとを総合して発表の予定としている.
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