研究概要 |
申請者らは、ALS患者において髄液中のG-CSFが有意に上昇していることを見出し、ALS患者剖検群では、G-CSFが病変部の反応性アストロサイトの細胞体で強発現すること、培養細胞実験でのG-CSFの神経防御作用を報告してきた。本年度は、ALSモデルマウスであるmSOD1^<G93A>マウスに対するG-CSFの髄腔内投与による治療効果・副作用の検討を行った。mSOD1^<G93A>遺伝子導入マウスおよび対照(生理食塩水投与)群に対し、G-CSFを100μg/kg、生後10週より死亡まで連日皮下投与を行ったところ、G-CSF投与群:141.3±7.1日、対照群:133.7±8.1日と、その延命効果を明らかにすることができた。mSOD1^<G93A>マウスでは、無症状時期である生後12から14週の時点で、大径有髄線維数の減少が始まるが、G-CSF投与によりその減少速度が抑制されていることから、G-CSFは発症以前よりその進行を抑制しうると考えられた。さらに、NSC34培養細胞を用いた実験では、G-CSFは濃度依存性にその神経保護効果を有することが示された。G-CSF投与による副作用の検証では、G-CSFをマウスに5日間連続皮下投与した場合、白血球10,700/μlから18,100/μlと白血球数の増加を認め、さらに肝・脾腫の状態を呈していた。異常白血球の出現など白血病の発症は見られなかった。また、G-CSFには抗アポトーシス作用以外に血管増性作用が知られており、病理学的検索では、G-CSF皮下投与マウス脊髄では、抗lamin抗体陽性の血管の増生効果が示され、さらに一部には、新生細胞のマーカーであるnestin陽性細胞の出現を認めていた。
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