研究課題/領域番号 |
21591095
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
高嶋 博 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (80372803)
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研究分担者 |
有村 公良 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 准教授 (30140908)
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キーワード | SCAN1 / Tdp1 / SSBR / 末梢神経障害 / 一本鎖DNA修 / ノックアウトマウス |
研究概要 |
我々は、末梢神経障害を伴う小脳失調症をspinocerebellar ataxia with axonal neuropathy 1(SCAN1)と名づけた。それは一本鎖DNA修復にかかわる酵素であり、新しい疾患発症機序が考えられた。本症の神経変性の機序を明らかにするため、ノックアウトマウスの解明を行った。これまでの解析へ、Tdp1ノックアウトマウスは、8ヶ月齢までは神経症状を呈さなかったが、抗ガン剤の投与により、臓器障害と運動障害、神経伝導検査異常、致死性を認めた。我々は、今回さらに長期間の観察による、神経系への影響を確認した。その結果、マウスは。生後280-330日あたりで、急激なやせを伴い死亡する現象が見られ、コントロール群より明らかに短命であった。その理由として、視力の消失により、おそらく飲水や食事がとれずに全身状態が悪化して死亡する状況が観察された。病理学的には、脳神経系や主要臓器に異常なく、網膜萎縮が見られた。とくに外顆粒層と内顆粒層の比の異常がはっきりしており、ヒトで言う網膜色素変性症に近い所見が得られた。これまで、SCAN1患者における神経細胞の脱落の機序は、単なるloss-of-functionの序ではなく、TDP1-H493R-DNA complexのtoxicityが発症に関与していることを報告してきた。また、Tdp1のLoss-of functionが引き起こす現象について、抗ガン剤への耐用性の低下がわかっていたが、今回の発見で、photo-stressによる網膜細胞の耐用性にも問題を引き起こす可能性が考えられた。一本鎖DNA修復過程Single strand Break repair(SSBRs)と網膜神経細胞の障害について、さらに追求していく必要がある。
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