本研究の目的は、種々の神経変性疾患原因蛋白同士の相互作用、翻訳後修飾、細胞内局在を検討することである。翻訳後修飾はユビキチン化とリン酸化を対象とする。本年度はユビキチンE3リガーゼであるParkin関連パーキンソン病患者線維芽細胞において、酸化ストレス下で細胞死が誘導されること、それがDNA損傷蓄積を伴うことを見出し、報告した(Biochem Biophys Res Commun 2010 ; 391 : 800)。また、ユビキチン化が低下している患者細胞で、脱ユビキチン化阻害剤iodoacetamideを負荷し、ユビキチン化を促進することで、細胞がどのような影響を受けるかを検討した。この負荷により、細胞死は促進した。このことは、ユビキチン化蛋白が蓄積することは、ユビキチンが減じ元の障害蛋白が蓄積するよりも細胞障害が強くなったことを意味すると思われた。また、常染色体優性遺伝小脳失調症14型の原因遺伝子protein kinase Cγが常染色体劣性遺伝小脳失調症の原因遺伝子アプラタキシンのリン酸化を亢進し、核内輸送を妨げ、結果としてDNA修復蛋白でもあるアプラタキシンの核内欠乏を来たすことで、DNA損傷が蓄積し神経細胞の障害が生じることを証明した(Hum Mol Genet 2009 ; 18 : 3533)。すなわち、2種類の神経変性疾患原因蛋白、アプラタキシンとprotein kinase Cγの相互作用を明らかにした。
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