研究概要 |
本研究の目的は、種々の神経変性疾患原因蛋白同士の相互作用、翻訳後修飾、細胞内局在を検討することである。翻訳後修飾はユビキチン化とリン酸化を対象とする。 今年度は家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子のUBQLN2の同定に携わった(Nature 2011;477:211)。この遺伝子がコードする蛋白ubiquilin2はユビキチン様ドメインとユビキチン関連ドメインを有し、変異蛋白は、ユビキチンープロテアゾーム系の障害を生じる。このubiquilin2は家族性ALSのみならず、遺伝子異常のない孤発性ALSの脊髄運動ニューロンにも凝集を生じるが、その凝集には別のALS原因蛋白であるFUS,OPTN,TDP43,SOD1などとも共在する。すなわち、これら原因蛋白との相互作用が推定される。実際にfamily蛋白であるubiquilin1はTDP43蛋白の毒性を緩和することが指摘されており、今後はこういった、機能的な関連を証明する予定である。 一昨年度、常染色体優性遺伝小脳失調症14型の原因遺伝子protein kinase C γが常染色体劣性遺伝小脳失調症の原因遺伝子アプラタキシンのリン酸化を亢進し、核内輸送を妨げ、結果としてDNA修復蛋白でもあるアプラタキシンの核内欠乏を来たすことで、DNA損傷が蓄積し神経細胞の障害が生じることを証明した(Hum Mol Genet 2009;18:3533)。昨年度は、リン酸化アプラタキシンに対する特異的抗体を作製・解析した。線維芽細胞のウエスタンブロットにおいて、軽度高分子側にシフトしたバンドが観察された。今年度は、神経様SH-SY5Y細胞におけるリン酸化蛋白の局在検討した。この結果、リン酸化蛋白は核内にも存在することが判明した。今後、核内でリン酸化を受ける機序の解明をする予定である。 また、蛋白分解に関するproteasome subunit beta type 8 (PSMB8)が免疫性の神経筋疾患である中条病の原因遺伝子であることを発表した(Proc Natl Acad Sci USA. 2011; 108: 14914)。
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