研究概要 |
常染色体優性遺伝性PD(ADPD)の原因遺伝子としてSNCAとLRRK2などが同定されているが,既知変異頻度は5-10%くらいで,殆どの家系で変異が同定されていず,いまだADPDの全体像は不明である.一方,ADPDにおいて常染色体劣性遺伝性PD(ARPD)の原因遺伝子のヘテロ接合体変異が見つかっており,ADPDにおいてもARPDの原因遺伝子の解析を進め,発症への関与を検討する必要がある.本研究課題では,網羅的に既知遺伝子の変異解析を行い,ADPD180家系をより均一な家系群に分類し,既知遺伝子変異のない家系から新規原因遺伝子変異を同定することを目的としている. 本年度は,新規家系の集積を行うとともに遺伝子バンクの構築を進め,ADPDの家系収集は250家系を超えることができた.本遺伝子バンク症例につき既知変異の有無をscreeningし,多型情報も含め遺伝子バンクにおける解析結果をデータバンク化するとともに,家系の純化を行った.Parkin, ATP13A2, PLA2G6などのARPDの原因遺伝子の解析も並行して行った. その過程における特に大きな成果として,SNCAの解析を進める中で新たに世界で4番目のSNCA新規点変異家系を見出すことができ,解析結果を臨床像,PET所見とともに現在論文作成中である.また,SNCA 3重複変異家系をアジアで初めて見出し,論文報告した. LRRK2の解析も並行して進め,北アフリカやヨーロッパで頻度の高いG2019S変異をトルコ人と日本人でも認め,それらの祖先が共通であることを報告した.さらに世界中のこの変異患者のハプロタイプを比較解析し,LRRK2変異の起源,PDの歴史,民族移動の歴史をさらに人類遺伝学的観点から探索し,論文を発表した. さらにADPDの新規原因遺伝子として報告されたGIGYF2変異の解析を進め,今のところ日本人を中心とする我々の症例には存在しないことを明らかにし論文報告した. これら以外のものも含め本年度の10本の論文発表の仕事だけでなく,基盤となる対象と解析結果を蓄積してきていることで,さらに新規原因遺伝子の同定に向けた解析が継続してきている.
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