研究課題
福山型先天性筋ジストロフィーをはじめとする先天性筋ジストロフィーは、α-dystroglycan(α-DG)の糖鎖修飾の異常により基底膜のlamininとの連携が断たれることがその筋細胞壊死の原因と推測され、α-dystroglycanopathyと総称されている。最近、糖転移酵素と推測されているLargeによりα-DGの機能が著明に修復されることが明らかにされ注目を集めている。本研究はこのLargeの持つα-DG機能修復作用を利用してα-dystroglycanopathyに対する治療法の開発することを目的としている。本年度は我々が新規に作出したLargeを過剰発現するトランスジェニックマウスの解析を進め、in vivoにおけるLargeのα-DG機能修復作用について検討した。Largeトランスジェニックマウスをウエスタンブロット法、免疫蛍光抗体法で解析した結果、骨格筋、心筋、脳、末梢神経、腎臓などを含む各種臓器においてα-DGの高分子量化と糖鎖修飾の著明な亢進を認めた。また、ブロットオーバーレイ法、in situオーバーレイ法の結果から同マウスの各種臓器においてα-DGのlaminin結合能、agrin結合能が著増していることが明らかとなった。さらに心筋、腎臓、肝臓などにおいては基底膜におけるlamininの発現が亢進していることが確認され、同マウスは通常よりも構造的に強固な基底膜を有しているものと考えられた。これらの結果から、Largeはα-dystroglycanopathyに対する分子標的治療として有用である可能性が強く示唆された。
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Neurochemistry : Mollecular aspects, cellular aspects and clinical applications(NOVA Science Publishers, Inc. New York)
ページ: 195-209